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ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が、“誰もが楽しめる未来を、デザインする”をテーマに、障がいのあるクリエイターや多様な感性、背景を持つ人々と共創して、新たな価値の創出を目指す『Creative Vision Project』。
本記事では、ソニーグループ株式会社の特例子会社であるソニー希望・光(以下、SKH)とともに実施した、インクルーシブアートワークショップをフィーチャーしながら、『Creative Vision Project』がソニーグループ内で生み出すシナジーについて担当者たちに聞く。
後編では、SMSとSKHの共創プロジェクトをどのようにしてビジネス化するか、今後の展望を語る。
目次

三村 薫
Mimura Kaoru
ソニー希望・光

小泉 剛
Koizumi Takeshi
ソニー希望・光

太田隆之
Ohta Takayuki
ソニー・ミュージックソリューションズ

村上亜紀子
Murakami Akiko
ソニー・ミュージックソリューションズ
記事の前編はこちら:つながって、広がる――ソニーグループ内のインクルーシブな共創が、エンタメの未来をゆっくりと変えていく①
──『Creative Vision Project』は、福祉に属するものではなく、事業としての拡大を目指していますよね。軽井沢町社会福祉協議会、一般社団法人konstと取り組んでいる軽井沢のワークショップで創作したアートは、既にフェスやイベントのメインビジュアル、アーティストの宣材写真の一部などに活用されています。そのうえで、SKHとの取り組みは、今後どのようにビジネスとして発展させていきたいと考えていますか?
太田:SKHとのワークショップで制作したアートを「All Sony Festival 2025 ファミリーデー」で使用した時点から、SKHの皆さんには原画使用料というかたちで対価をお支払いしたいと考えていました。ただ、今回は初めての取り組みということもあり、まずは試験的な実施となりました。
次回のワークショップからは、事前に条件などを整理したうえで契約を結び、そこで制作したアートを我々が商業利用する場合には、使用料をお支払いするというかたちでの運用をご相談しています。なお、現時点ではSKHのスタッフの皆さんが制作された作品の権利は、すべてSKH側に帰属しています。
三村:ワークショップで生まれたアートの価値をどのように捉え、ビジネスへと結びつけていくかについては、会社としても初めての試みだったので、社内での整理が十分にできていませんでした。
例えば、これらの作品を価値あるものとして位置づける場合、どのように資産として扱うのかといった点も含めて、今後社内で検討を進めていく必要があると考えています。
──今後ビジネスとして発展させる場合、どのような方向性が考えられますか? 生まれたアートをイベントやプロダクトなどに活用し、その使用料を対価として支払うビジネスモデルでしょうか。
太田:大きく分けて、3つの方向性を考えています。ひとつは、今おっしゃったように、アートをビジュアルとして活用し、使用料をお支払いするモデルです。
ふたつ目は、クライアントから新たなプロダクトやサービスの企画をいただき、初期段階からSHKの皆さんとインクルーシブデザインワークショップを開き、そのアウトプットを納品するクライアントワークです。
3つ目は、SKHでイラストレーター、Webデザイナーとして活躍するスタッフの方々に、SMSがデザイン業務を発注する形です。これら3つを並行して進めていけたらと考えています。
──そのなかで、特にビジネスとしてスケールしそうな領域はどれでしょうか。
太田:現時点ではまだ本格始動していませんが、ふたつ目のインクルーシブデザインのワークショップには大きな可能性を感じています。
というのも、この取り組みは単にアートを制作するだけでなく、多様な視点や感性をビジネスに取り込むことにつながるからです。SKHの皆さんが画像アノテーションなどのIT/映像領域に取り組んでいる点とも親和性が高く、私たちの事業に新しい価値をもたらす可能性があると考えています。
──SKHのスタッフのなかにはイラストやWebデザインを手がけている人もいて、SKHとの共創では、SMS側のデザインワークもさらに幅を広げることができるのではないでしょうか。
太田:そうですね。SKHの皆さんには、私たちが日々行なっている制作業務において、さまざまなかたちで関わっていただける可能性があると感じています。
三村:SKHには、多様な特性を持つスタッフが在籍しています。そのため、インクルーシブワークショップにおいては、スタッフ一人ひとりの素直な声をどのようにして引き出すかが重要だと感じました。どのようなスタッフを招いてワークショップを行なうのか、こちらの選定スキルも今後さらに磨いていく必要があると思います。
SMSの皆さんは、こうした表現の引き出し方やプロセスについて、私たちだけでは思いつかない視点や手法をお持ちです。お互いの強みをかけ合わせ、共創しながらビジネスとして発展させていけたらと考えています。私たち自身も学びながら、パートナーとして関係を深めていきたいですね。
村上:案件ごとにコンセプトがあり、求められるアウトプットも異なります。まずは最終的なゴールを明確にしたうえで、“どのようなプロセスを設計すれば、そのアウトプットに辿り着けるか”を考えていくことが重要です。ワークショップのプログラムも、案件ごとに最適化しながら設計していきたいと思います。
──この取り組みは、SKHのスタッフの皆さんに新たな仕事や活躍の場を生み出すということに加え、SKHの認知拡大という視点でも意義があるのではないでしょうか。
三村:そうですね。私たちSKHは、障がい者雇用を推進する特例子会社として、ソニーグループにおけるダイバーシティを体現する役割の一角を担っています。そのため、日々の取り組みを発信し、実践例として示していく責任もあると考えています。
SMSとの取り組みは、私たちの活動を広く知っていただくうえでも非常に意義深いものです。ソニーグループにおけるひとつ目の特例子会社のソニー・太陽は、ソニーグループのものづくりにおいて素晴らしい技術を発揮しており、広く認知されています。
ですが、私たちSKHはグループ内でもまだ十分に認知されているとは言えず、グループ社員の半数程度にしか知られていません。私たちも会社見学の受け入れやグループ内イベントなどを通じて周知を広げているところですが、今回のような取り組みも、その一助になるチャンスとしていきたいと考えています。
小泉:SKHのスタッフも、当然のごとく一人ひとりが異なる個性や可能性を持っています。それをどのように引き出し、どのように活躍の場につなげていくかは、常に我々が考えているテーマでもあります。
『Creative Vision Project』のように、アート作品を生み出すこともそのひとつの機会。参加したスタッフとしても、“自分にもこんなこともできるんだ”という新たな発見につながったのではないかと思いますし、実際にアンケートでも“参加して良かった”という声が多く寄せられていて、手応えを感じました。
そのいっぽうで、先ほども話に出たように、こうした取り組みは細かな配慮の積み重ねが非常に重要です。どのような点で不安を感じたのか、どこに改善の余地があるのかを丁寧に拾い上げ、スタッフが“もう参加したくない”という気持ちにならないようにしていかなければいけません。
──参加を促進しつつ、スタッフのやりがいにもつなげていくということですね。
小泉:はい。でも、既にいい兆候は出ていて。スタッフのなかには知的障がいや精神障がいの影響で、感覚過敏(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚のそれぞれが過敏に反応してしまうこと)に悩まされている人も多いのですが、『Creative Vision Project』に参加して“楽しい”と感じているときは、普段ほど感覚過敏が気にならなかったという声もありました。
これを、我々は非常に大きなヒントだと感じています。仕事でも創作の場でも、本人が楽しく前向きに取り組める環境をいかに作れるか。それを考えることは、どうしたら、より多くの人に楽しめるエンタテインメントを作れるか、ということにもつながるのではないかと思います。
──最後に、今後の展望を聞かせてください。それぞれが思い描く『Creative Vision Project』の未来像は、どのようなものでしょうか。
太田:インクルーシブデザインを特別なものとして扱うのではなく、SMSのクリエイティブ部門のなかで、誰もが当たり前に活用できる状態にしていくことが中長期的な目標です。“インクルーシブかどうか”を意識して区別するのではなく、自然とその考え方が制作のなかに組み込まれている。そんな状態を実現することが『Creative Vision Project』の理想ですね。
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村上:このプロジェクトは、当初、インクルーシブデザインによってSMSのデザイナーやクリエイティブディレクターの表現の幅を広げること、新たな発想の引き出しを増やすことを目指して取り組んできました。
ですが、実践を重ねるなかで、エンタテインメントの分野においても、立場や特性の違いを超えて、活躍し、楽しめる仕組みを作れるのではないかと可能性を感じています。誰もが境界なく楽しめるエンタテインメントを生み出すために、『Creative Vision Project』が少しでも貢献できたらと思います。
三村:身体的な特性に配慮したインクルーシブワークショップは、比較的体系化しやすい分野になりつつあると思います。ですが、知的障がいや精神障がいの特性に対応した取り組みは、まだ確立されていない部分が多いと感じています。
その点、SKHには多様な特性を持つスタッフが在籍しています。クライアントのニーズに応じて、どのような形でインクルーシブワークショップを実現していくか。その方法論を確立し、SMSとSKH双方で連携しながらビジネス化の道筋も構築していければと思います。
小泉:インクルーシブワークショップは、SKHが掲げるダイバーシティ推進活動において重要な取り組みのひとつです。私たちの企業理念とも重なるため、今後も継続していきたいと考えています。
また、SKHでは“安心、安全な職場づくり”も重視しています。これは特定の環境に限らず、さまざまな場に応用できる考え方です。今回のような取り組みを通じて、誰もが安心して個性や能力を発揮できる環境づくりについて考え、ソニーグループ全体にも発信していければと思います。
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