人事:エンタテインメントを生み出すのに必要不可欠な“人”を発見する仕事
2024.12.13


音楽、アニメ、ゲーム、キャラクター、イベントなど、人に感動を提供するエンタテインメントにはさまざまなジャンルがあり、そのジャンルの数だけ多種多様な職種が存在する。
連載企画「エンタメ業界のお仕事紹介」では、ソニーミュージックグループで働くスタッフの生の声から、エンタメ業界に存在する職種と業務内容、そして、その仕事にどんな“やりがい”や“魅力”があるのかを紐解いていく。
第8回は、アニプレックス(以下、ANX)でアニメの企画制作に携わるプロデューサーに話を聞いた。
目次

YOSHIHIRO
アニプレックス
アニメ企画制作
キャリア:9年目
音楽企画制作/経理・財務/アニメ・ゲーム宣伝/音楽営業(マーケティング)/マーチャンダイジング/音楽宣伝/グローバルマーケティング(音楽)/人事/プログラマー/著作権・契約・法務/ゲーム企画制作/キャラクタービジネス/マネージャー/パッケージ制作進行/ファンクラブ運営/デジタルコーディネーター/クリエイティブ(クリエイティブ/アートディレクション・制作プロデュース)/グローバルマーケティング(アニメ・ゲーム)/エンタプライズITシステム/音楽営業(セールス・マーケティング)/イベント・展示会運営/クリエイティブ(空間設計/企画)
 
音楽営業(セールス)/音楽営業(マーケティング)/音楽宣伝(デジタルプロモーション)/海外ライセンス(アニメ・ゲーム)/国内ライセンス(アニメ)/スタジオエンジニア
大学時代、映画やテレビ、アニメなどが好きで、将来は映像制作に携わる仕事をしたいと考えていました。なかでもよく見ていたのがアニメ。ただ、当時は、アニメ業界や制作工程に詳しかったわけではなく、あくまで一視聴者としてアニメを見ていたのですが、好きな作品のクレジットに“アニプレックス”“ソニーミュージック”と頻繁に社名が出てくることに気づき、興味を持ったのがきっかけです。
ソニーミュージックグループはグループ一括採用なので、配属先が希望部署になるかは入社してみないとわかりません。そんななかで、私自身はANXを希望し、運良く入社することができました。
アニメの企画から完成までを見届ける仕事です。その過程には、クリエイティブな面だけでなく、ビジネス上の建てつけとして事業プランの策定、実行もあり、予算の管理なども含めて、その作品をいかにヒットさせるかを考えていきます。
尺や作り方にもよりますが、アニメの制作には1話あたり数千万円の制作費がかかります。それを1クール約12話分作るとなれば、ひとつの作品に対して数億円規模の予算が必要になるんですね。
それをより多くのユーザーに届けつつ、利益を生み出していかなければ、ビジネスとして次につながらず、クリエイターにも還元できません。スタジオでは数百人規模のスタッフが長期間に渡ってひとつの作品に携わることもあるので、ビジネス面でも成功を収められるように努めます。
例えば、“この作品はグッズ展開に力を入れよう”“この作品の原作は海外で人気があるから、配信を軸に海外へのアプローチに注力しよう”などの戦略を考えるのもプロデューサーの役割。大きく旗を振りながら、アニメ作品をビジネスサイドから支えています。
入社後、約4年間はDVDやBlu-rayなどのパッケージ商品を店舗やECサイトに売り込む営業職に就いていました。そんななか、ANXには若手スタッフがアニメ作品の企画を提案する会議があり、毎回何かしらの企画を出していたのですが、そのなかのとある回で音楽をテーマにした漫画原作のアニメ化をプレゼンしたんです。それがきっかけになったかは分からないですが、企画制作部門に異動することになり、結果的にその作品のアニメ化に携わることになりました。
異動したばかりのころは、アニメ制作に関する知識がなかったので、アシスタントとして先輩から仕事を学び、アニメがどうやって作られているのか全体構造を一から学んでいきました。とはいえ、プロジェクトによってやり方はそれぞれ異なります。
制作工程は共通していますが、原作のメディアやクリエイター、制作スタジオが違うとプロジェクトの骨格から変わることもあるので、一律にマニュアル化できるものでもないんですね。一つひとつのプロジェクトに伴走しながら、それぞれのやり方を先輩から学んでいきました。
多くの方々に作品を見てもらい、なおかつ好評をいただけたときに、やりがいを感じます。なかでも、担当作品の放送終了後に作品にまつわる音楽ライブイベントを企画できたことは印象に残っているできごとのひとつです。
ANXが主催したライブだったので、ライブの制作チームとセットリストや細かい演出について話し合いを重ねながら作りあげました。当日は客席間近のところで、皆さんと同じ目線でライブを見ていたのですが、3,000人近いファンの方々が声を上げて盛り上がる様子には感慨深いものがありましたし、忘れられない経験となりました。
粘り強く行動できる人が向いていると思います。企画立ち上げから日の目を見るのが数年後というのが当たり前の業界なので、反応が分からぬまま進めていく期間がとても長いです。特にプロデューサーという立場になると判断を求められて、その状況ごとに都度判断を下すことになります。変わっていく状況に対して粘り強く考えて、実行していく、そういった素質があるほうがいいとは思います。
また、プロデューサーは監督をはじめとする多くのクリエイターと相対する仕事。さらに、原作のあるアニメの場合、原作者と監督の間に立って意見をすり合わせる必要もあります。納期や予算との兼ね合いも考えながら、さまざまな人たちの間に入って、柔軟に対応する力と調整力がとても重要だと思います。
ある程度のコミュニケーション能力があれば、ほかに最初から必要なスキルはありませんが、アニメをたくさん見ておくことはおすすめします。アニメの制作を進める際には、“あの作品に近いジャンルです”“あの作品にこういう演出がありましたよね”と、ほかの作品を例に挙げて説明することがあります。有名作品はある程度知っている前提で会話が行なわれることが多いので、見ておいて損はないと思います。
とはいえ、不足している知識は入社後に補えば良いので、マストではありません。知識はあとからついてきますし、入社してから追いつけるだけの熱量をしっかり持っていることのほうが重要だと思います。
チャレンジしやすい環境だと思います。私自身も若手スタッフを対象としたプレゼン会議で企画を提案し、結果的にそれがアニメ化されましたが、今でも2カ月に1度くらいのペースでこの会議は行なわれています。この会議は、若手スタッフであれば、部署を問わずにプレゼンできますし、そのなかでプレゼンされたものが実際に企画として動き出す事例もいくつかあります。
会議自体も、堅苦しいものではありません。“最近、こんな作品が人気です”“この作品、面白いですよ”と情報を共有する場でもありますし、おすすめする作品やプレゼンでの話しぶりによって、その人の人となりも見えてきます。コミュニケーションの活性化にもつながりますし、スタッフにとっていい機会だと思います。
プロデューサーは、自分で手を動かしてアニメを作れるわけではありません。監督や脚本家、アニメーター、音楽制作など、作り手あってこそのアニメ作品ですので、クリエイターに伴走し、その人たちの才能を最大限にいかせるよう、作品づくりのお手伝いをするのが仕事です。今後も、作品の根幹にある熱量を損なわず、より多くの方に届けるために頑張っていきたいですね。
私自身としてはまだ、プロデューサーとして初めの一歩を踏み出したばかりです。ANXは、やろうと思えばいろいろなことに挑戦させてくれる会社なので、これから多くの経験を重ね、面白いアニメを企画していきたいと思います。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
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