国内ライセンス(アニメ):さまざまな企業とのコラボで、アニメ作品の魅力を拡大させる仕事
2025.12.12


音楽、アニメ、ゲーム、キャラクター、イベントなど、人に感動を提供するエンタテインメントにはさまざまなジャンルがあり、そのジャンルの数だけ多種多様な職種が存在する。
連載企画「エンタメ業界のお仕事紹介」では、ソニーミュージックグループで働くスタッフの生の声から、エンタメ業界に存在する職種と業務内容、そして、その仕事にどんな“やりがい”や“魅力”があるのかを紐解いていく。
今回は、アニプレックス(以下、ANX)でアニメ、ゲームの海外ライセンス事業に携わる担当者に話を聞いた。
目次

YUSA
海外ライセンス(アニメ・ゲーム)
キャリア:9年目
音楽企画制作/経理・財務/アニメ・ゲーム宣伝/音楽営業(マーケティング)/マーチャンダイジング/音楽宣伝/グローバルマーケティング(音楽)/アニメ企画制作/人事/プログラマー/著作権・契約・法務/ゲーム企画制作/キャラクタービジネス/マネージャー/パッケージ制作進行/ファンクラブ運営/デジタルコーディネーター/クリエイティブ(クリエイティブ/アートディレクション・制作プロデュース)/グローバルマーケティング(アニメ・ゲーム)/エンタプライズITシステム/音楽営業(セールス・マーケティング)/イベント・展示会運営/クリエイティブ(空間設計/企画)
 
音楽営業(セールス)/音楽営業(マーケティング)/音楽宣伝(デジタルプロモーション)/国内ライセンス(アニメ)/スタジオエンジニア
私は雇用期限のある契約社員としてANXに入社しました。
大学時代は文理融合型の学部で、脳神経科学や身体科学を専攻し、大学院では、最先端科学技術を社会に導入する際の倫理課題、さまざまな国と地域の法規制の変遷などを研究していました。
そんななか、週5日フルタイムで働ける職場を探すことに。そこで見つけたのが、ソニーミュージックグループの求人募集でした。
ただ、大学院で学んでいたことと関係がないし、長く働く場所という意識はまったくなくて。“期間限定で働くなら、せっかくだから面白いことをしたい”“ソニーミュージックグループなら、幅広いエンタテインメントに関わるチャンスがあるのでは”というぐらいの軽い気持ちでエントリーしました。
そのうえで、私が現在所属しているANXの海外事業部に配属されたのは、まったくの偶然で。ソニーミュージックグループ内の別の会社、別の職種にエントリーしたところ、人事部の人から「ANXの制作、宣伝アシスタントの仕事に興味はありませんか?」と言われたんです。
こちらとしては、“この職種でないとダメ”というのがなかったので、了承して面接に進んだところ、当時の宣伝部の部長のスケジュールが合わなくて。代わりに現在の私の上長が面接官を担当してくれることになったんです。そこで、私の考え方とか学んできたことに興味を持ってもらって、“宣伝部ではなく、海外事業部に来て!”と声をかけてもらい、入社が決まりました。
海外のパートナー企業と連携し、ANXが手がけるコンテンツやIPを世界に展開していく仕事です。まず、作品ごとにどのパートナー企業と組むかを検討し、経済条件も含めて交渉したうえで、契約を進めます。
例えばあるアニメをアメリカで展開する場合、“劇場上映はA社と”“放送、配信はB社と”“グッズ展開はC社と”というように、国と地域、権利の種類を細かく分けて、最適なパートナーを選択し、その企業と協力しながら海外展開を行ないます。
近年はライセンスビジネスにとどまらず、ANXの海外のブランチであるAniplex of America、Aniplex (Shanghai)などと連携しつつ、自分たちが主体となって海外展開を進めるケースも増えています。海外のファンに向けた英語字幕つきのプロモーション番組を制作、発信したり、海外イベントのステージを自ら企画、運営したりと、より積極的なアプローチでグローバル展開を広げています。
また、以前は地域ごとに担当が分かれていましたが、最近では地域横断的な視点、社内での連携強化がさらに求められるようになりました。そこで、約1年前に新設されたのが海外マーケティングチームです。映画作品の全世界配給、アニメから派生した音楽バンドの海外ツアー、海外でのヒットを見据えたゲーム企画のライセンス、マーケティング支援など、既存の枠にとらわれない新しい事業で海外展開に取り組んでいます。
同じ部署のメンバーは、海外在住、留学経験者が多いですし、海外国籍の方もいます。ただ、私自身は海外生活の経験は少なく、大学院時代に3カ月ほど留学した程度。両親が韓国出身なので、韓国語の読み書きが多少できるくらいです。
そのうえで、海外企業との打ち合わせでは、相手の話を理解し、自分の意見をきちんと伝える必要があります。そこで、同僚たちとおすすめの参考書やアプリを共有したり、英語のレッスンを受けたりして、日々勉強を重ねています。
それでも、言語の壁を感じることは多々あって。特に難しいのは、ネガティブな内容をどう伝えるか。日本語的な婉曲表現をそのまま英語にすると“NO”というのが伝わりづらく、逆にストレートすぎると冷たく聞こえてしまう。
しかも、同じ英語圏でも国、地域、都市、文化圏によって伝え方や言い回しが違ってきます。英会話における空気を読む力、適切なニュアンスの言い回しを考え表現する力が足りず、もどかしい思いをすることもしばしばあります。私個人の見解としては、何年もその土地に住んで言語を身につけた人たちには、絶対に敵わないと感じています。
ただ、語学力は勉強次第で伸ばすことができます。先輩や同僚も助けてくれますし、今の語学力を理由にこの仕事を諦める必要はまったくないと思います。
業務内容が多様であることだと思います。字幕や吹替版を制作するスタジオとやり取りをしたり、海外のパートナー企業と一緒に宣伝プランを立てたり、各言語版のロゴデザインやキャッチコピーの翻訳を一つひとつ検討したり。
さらには、グッズのデザイン監修や現地で人気のブランド、IPとのタイアップ施策の調整なども行ないます。常に新しい仕事やプロジェクトに取り組めるので、毎日が新鮮で、私にはとても合っていると感じます。
もうひとつの魅力は、国と地域ごとに文化やビジネスの個性が感じられることです。例えばアメリカは配信や上映での展開が中心ですが、欧州では今でもパッケージ商品に需要があり、アジアでは日本と似たようなグッズ展開やポップアップ展開が行なわれるなかでも、東南アジア圏ではアパレル商品が人気など、国と地域、相対する企業や担当者によってそれぞれ個性が違うので、日々新たな発見があって面白いですね。
あるアニメシリーズの海外展開です。その作品は、当初、日本と比べると海外での認知度はそれほど高くなくて、一部のアニメファンが楽しむものという認識をされていました。しかし、海外でもヒットが狙える力を持った作品だというのは、チームの全員がわかっていたので、長期的にシリーズを展開するなかでどうやって作品の海外での認知度を育てていくべきか、考え抜く必要がありました。そこで、課題を一つひとつ見つけて、その都度丁寧に解決していくという努力を海外事業部の全員で重ねていったんです。
長くさまざまな試みを重ねてきた結果、社内、グループ、社外の関係者の皆さんにもご理解、ご協力をいただき、アメリカで開催された大型イベントのメインステージで、監督や撮影監督、キャストの登壇、主題歌を歌うアーティストの歌唱、本編の冒頭上映を行なうステージを実施。普段日本のアニメに触れることのない層にまで作品の魅力を伝えることができ、異例の大ヒットにつなげることができました。
この作品の海外展開に携わることができ、チームとして大きな成果を出せたことは、非常に感慨深かったですし、自分のなかでも自信につながるプロジェクトでした。
世界が多様であることを面白がれる人だと思います。自分のルールや“こうあるべき”という考え方に縛られてしまうと、苦しくなってしまいます。世界には、その土地ごとにいろいろな文化や価値観があって、アニメの楽しみ方も人それぞれ。その違いを面白いと思えて、尊重できるマインドが大切だと思います。
アニメの海外需要が高まり、注目度が増していくなか、期待に応える成果を出せるかプレッシャーを感じる場面も多々あります。ですが、私たちの仕事はエンタテインメント。“人を楽しませるために働いているんだ”ということを忘れずに、目の前の壁をどうやったら乗り越えられるか? そのことを面白がれるのが大事だと思います。
私が目指しているのは、プロジェクトに関わるみんながハッピーでいられること。
そのために、ときには組織のルールや仕組み、やり方を変えなければいけない場面があります。でも、何かを変えるためには、やはり一定以上のポジションになることが求められます。だからこそ今後は、自分がそういうポジションを担えるようになるために、力を伸ばしていきたいと考えています。
社内だけでなくグループ全体、さらには社外にもネットワークを広げながら、自分がハブとなって、物事をまとめられる存在になることが、直近の私の目標です。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
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